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先日、ニュース番組を見ていたら「あれっ?」と思い、調べてみたら、「うーん⤵」と興味の方向が変わってし

まったのでチョットご報告です。

 

 

 

 根っこでは繋がっていました。

 

 

まずはニュースの方です。

毎日新聞社 医師の定額年俸「残業代含まず」

 

このニュースは、「時間外給与(残業代)は年棒の1,700万円の中に含まれる。」という契約で働いていた男性外

科医が解雇は無効であるとして,雇用契約上の地位確認及び時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金並びにこ

れに係る付加金(裁判所の裁量で決める制裁金みたいなものです。)の支払等を求める。というニュースでし

た。

 

 

1審では、時間外労働の割増賃金及び深夜労働に対する割増賃金については,年俸に含めて支払われたと

いうことはできず,割増賃金56万3380円及びこれに対する遅延損害金の支払を命じています。

 

次に原審では、上告人(男性外科医)の割増賃金及び付加金に関する請求をいずれも棄却すべきもの、つまり1審

とは逆の判断を下しました

 

そして今回の判決です。

最高裁は、原審(東京高等裁判所)の判断を「是認することができない。」とし、原審へ差し戻しました。

その理由が、「時間外労働等に対する割増賃金を年俸1,700万円に含める旨の本件合意がされていたものの,この

うち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかった」と判断した為でした。

 

 

実を言うと、この事件は「年棒1,700万円」やら「働き方改革に影響がある」など、なかなか派手な見出しが

出ていますが、最高裁の判旨は以前からの判旨を踏襲するもので、正直「そうだよね。やっぱり。」的なもので

した。

 

判決文から引用します。(赤字は筆者によります。)

裁判所 最高裁判所判例集 事件番号平成28(受)222

 

労働基準法37条が時間外労働等について割増賃金を支払うべきことを使用者に義務付けているのは,使用者に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働等を抑制し,もって労働時間に関する同法の規定を遵守させるとともに,労働者への補償を行おうとする趣旨によるものであると解される

労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解され,労働者に支払われる基本給や諸手当(以下「基本給等」という。)にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではない
他方において,使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには,割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ,同条の上記趣旨によれば,割増賃金をあらかじめ基本給等に含める方法で支払う場合においては,上記の検討の前提として,労働契約における部分とを判別することができることが必要

 

つまり、「割増賃金は時間外労働等を抑制する為の制度」で使用者は労働基準法37条をしっかり守りなさいよ。

計算方法も基本給や諸手当に割増賃金自体を含めること自体は37条に違反じゃないけど、その計算において基本

給やら諸手当とは別に「割増部分」をしっかり区別しときなさいよ。という事です。

 

これって以前にもチョット書いたんですが、「定額残業代・固定残業代」(まだ呼び名も固まっていませ

ん。)の考え方そのものです。(判決文でも考え方の基礎となった判例(テックジャパン事件*1)が引用されて

います。)

「ブラック企業リスト!!」 なんか思ってたんとちがう・・・(労働基準関係法令違反に係る公表事案)

 

 

そうなんです。「うーん⤵」と金剛力士像のような怖い顔になったのは「定額残業代・固定残業代」と共通

の考え方なんです。

 

 

 

 

 

そもそもこの「定額残業代・固定残業代」なんですが、

 

・「定額・固定」部分が他の賃金と明確に区分されていること。

・「定額・固定」部分の金額及び該当時間数をきちんと明示すること。

・時間外労働等の割増賃金額が「定額・固定」部分を超えた場合、差額支給を明示すること。

「定額・固定」残業代の合意の趣旨に反する不誠実な賃金支払いの実態のないこと。

 

この4点をしっかり守っていれば、「理論上」労使双方非常に有効な方法であるはずなんです。

(裁判所が厳格に「定額残業代・固定残業代」自体を否定しない理由はここら辺だと思うのですが。)

 

だって、労働者側にしてみれば、しっかり業務をこなして、仕事を早く終わらせれば、残業をする必要が無い

に、決められた「定額・固定」残業代だけは契約上、支給されなければならないからです。

(つまり総取り。)

 

使用者側にしてみれば、「残業時間を0にすれば、実質的には「定額残業代・固定残業代」全額お支払い出来ます

よ。」

 

というモチベーションが形成できる。

つまり自主的な残業時間の削減=業務の効率化を行える。という点です。

 

 

ですが、事業所側で決まった金額さえ払えば、そこまでの残業は命令できる。」といった反対解釈で運用して

いるケースをいくつも見てきました。

 

私見ですが、基本労働者に有利な手当が反対解釈で運用され、逆に不利な状況(毎月決まった残業をしなければ

ならない等)は、本末転倒としか言えませんし、今回までの最高裁の判旨(労働基準法37条は,使用者に割増

賃金を支払わせることによって,時間外労働等を抑制することにある。)に合致しないのは言うまでもありませ

ん。

 

キチンと運用できなければ、運用出来る土壌(時間外労働等が実質は「損ですよ」という認識)が出来上がるま

で、その運用、「やめませんか」。

 

 

最後に

 

 

 

「そうでもしなきゃ業務が消化出来ん!」と言うのであれば、

そもそもの雇用計画や賃金体系自体に齟齬が生じているはずです。

 

今回の最高裁判例を踏まえても、「割増賃金」に対する裁判所の考えは固まっていると言えそうです。

なので判例も意識しつつ、是非自社の制度を評価してみてください。

 

 

制度自体は悪いモノではないので、「正しい運用と確実な認知を心掛けていけば、いい制度になるよなぁ~。」

と静かな部屋でひとり、地蔵菩薩の様な遠い目でモニターを眺めていたのは言うまでもありません。

 

 

 

*1 裁判所 最高裁判所判例集 事件番号 平成21(受)1186(通称 テックジャパン事件)

この事件は「各月の上記一定の時間以内の労働時間中の時間外労働についても,基本給とは別に,労働基準法

37条1項の規定する割増賃金の支払義務を負う」とした判旨はもちろんですが、櫻井龍子裁判官の補足意見が

後の判断の指針となっています。是非読んでみて下さい。10ページだけなので大丈夫。おもしろいですよ。