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「いまさら触れないでおこう。」と思って放置しておりましたが、「なに?そのタイミング!」と言わんばかり

で、ある資料が発表されました。なので取り上げざるを得ません。

 

 

 

まずは、皆さまもご存知であろう、

豊田真由子衆議院議員の政策秘書に対する暴行・暴言」に関するニュースです。

日本経済新聞電子版 自民・豊田氏が離党届 秘書暴行報道めぐり

 

いわゆる「パワハラ」です。

 

様々なマスメディアで繰り返し報道されているので、いまさら申し上げる事でもないのですが、運転中の車内

で運転していた秘書に対し、「この、ハゲーーっ!」「ちーがーう(違う)だろーーっ!」等の暴言と共に、暴

行ではないかと推察される打撃音が録音されたテープレコーダーが公表された「あの」事案です。

 

「当選時から4年半で辞めた秘書は100人超」やら、「秘書が就職したくない事務所NO、1」など色々な情報が

報道されているのですが、(報道が真実だとしたら)かなり問題です。

(過去にも似た事実があったかもしれない間接事実だからです。つまり「悪質」だ。という事です。)

 

なお、代議士の古巣である厚生労働省のサイトでは、パワハラをこう定義付けしています。

 

職場のパワーハラスメントとは

職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

(出典 厚生労働省 あかるい職場応援団 パワーハラスメントの定義

 

(厚生労働省の労働関連部局の官僚さん、チョット気の毒です。真剣にパワハラ撲滅を考えている方々には迷惑

千万でしょう。出身部局も違うのに。)

 

 

裁判例を見てみよう

 

 

一部ニュースでは、被害者(秘書)の仕事上のミスのせいとの報道もありますが、個人の能力不足(ミス)と度

を越えた叱責(暴言・暴行)はどう考えても、イコールにはなりません。

 

指導者(加害者)がいくら仕事が出来ても、正論を言っていても、です。

 

個人の能力不足を非難するのであれば、

根気強く、しつこく、適正な業務の範囲内で「指導(不理解部分の抽出)・注意(業務進捗の方法の改善)」を

行い、それでもダメなら、配置転換や職種転換などを行うべきだからです。暴言・暴行が出てくる余地はありま

せん。

 

突然ですが、裁判例をお見せしたいと思います。

地公災基金愛知県支部長(A市役所職員・うつ病自殺)事件

 

この事件は2002年に公務とパワハラの心理的負荷によりうつ病を発症し、自殺するに至ったと主張していた事件

です。

2010年には名古屋高裁で労災認定。地方公務員災害補償基金が上告。2012年最高裁は上告を棄却し、名古屋高

裁判決が確定しています。

(あかるい職場応援団 裁判例を見てみよう 地公災基金愛知県支部長(A市役所職員・うつ病自殺)事件

 

 

以下、抜粋して引用します。(赤字は筆者によります。)

事案の概要

A市役所の職員(死亡当時は健康福祉部児童課課長)であった亡Tの妻Xが、うつ病発症及びこれに続く亡Tの自殺が公務に起因するものであると主張して、地方公務員災害補償基金愛知県支部長がした地方公務員災害補償法に基づく公務外認定処分の取消しを求めた事案。

 

いきなり余談ですが、この事件「地方公務員災害補償基金」という地方公務員の「公務上災害、通勤災害」に対

する補償等を行う「審査機関」なのですが、①その「審査機関」でパワハラ(後の裁判で認定済)があり、被害

者が自殺②それは、パワハラじゃないと公務外認定。③処分不服で裁判という、なんともやるせない事件です。

 

1.B部長の部下に対する指導の状況について

B部長は、市役所に勤務する公務員として、常に市民のため、高い水準の仕事を熱心に行うことをモットーとしており、実際、自ら努力と勉強を怠ることなく、大変に仕事熱心で、上司からも頼られる一方、部下に対しても高い水準の仕事を求め、その指導の内容自体は、多くの場合、間違ってはおらず、正しいものであった。

B部長は、②のような指導をしながら、部下をフォローすることもなかったため、部下は、B部長から怒られないように常に顔色を窺い、不快感とともに、萎縮しながら仕事をする傾向があり、部下の間では、B部長の下ではやる気をなくすとの不満がくすぶっており、このような不満は、健康福祉部の職員の間にもあった。

このようなB部長の部下に対する指導の状況は、A市役所の本庁内では周知の事実であり、同期である亡Tもよく知るところであり、過去にはこのままでは自殺者が出る等として人事課に訴え出た職員もいたが、仕事上の能力が特に高く、弁も立ち、上司からも頼りにされていたB部長に対しては、上層部でもものを言える人物がおらず、そのため、B部長の上記指導のあり方が改善されることはなかった。

2.B部長の下での公務遂行の心理的負荷の程度

B部長の部下に対する指導は、人前で大声を出して感情的、高圧的かつ攻撃的に部下を叱責することもあり、部下の個性や能力に対する配慮が弱く、叱責後のフォローもないというものであり、それが部下の人格を傷つけ、心理的負荷を与えることもあるパワハラに当たることは明らかである。

亡Tは、未経験の福祉部門で、仕事の種類や内容がこれまでとは大きく異なり、かつ、複雑多岐にわたり、しかも、部下に対する指導が特に厳しいことで知られたB部長を上司とする児童課への異動の内示を受け、大変な職場と不安に思う一方、これまでの約30年間にわたる豊富な経験から、どこへ行っても同じとの自信を示し、心理的な葛藤を見せていたが、その時点では未だ病的ないし病前的な不安状態にあったとまではいえなかった。ところが、現実に児童課に異動した後、亡Tは、部下の指導に厳しいB部長の下で、質的に困難な公務を突然に担当することになったものであって、55歳という加齢による一般的な稼働能力の低下をも考え合わせると、B部長の下での公務の遂行は、亡Tのみならず、同人と同程度の年齢、経験を有する平均的な職員にとっても、かなりの心理的負荷になるものと認められる。

B部長が仕事を離れた場面で部下に対し人格的非難に及ぶような叱責をすることがあったとはいえず、指導の内容も正しいことが多かったとはいえるが、それらのことを理由に、これら指導がパワハラであること自体が否定されるものではなく、また、ファミリーサポートセンター計画の件においては、D補佐の起案が国の基準に合致したものであったといえるにもかかわらず、B部長は、それを超えた内容の記載を求め続け、高圧的に強く部下を非難、叱責したものであって、このような行為が部下に対して与えた心理的負荷の程度は、大きいものというべきである。

亡Tがファミリーサポートセンター計画の件や保育園入園に関する決裁の際等に目の当たりにしたB部長の部下に対する非難や叱責等は、直接亡Tに向けられたものではなかったといえるが、自分の部下が上司から叱責を受けた場合には、それを自分に対するものとしても受け止め、責任を感じるというのは、平均的な職員にとっても自然な姿であり、むしろそれが誠実な態度というべきである。そうであれば、児童課長であった亡Tは、その直属の部下がB部長から強く叱責等されていた際、自らのこととしても責任を感じ、これらにより心理的負荷を受けたことが容易に推認できるのであって、このことは、亡TがB部長のことを「人望のないB、人格のないB、職員はヤル気をなくす。」等と書き残したメモ書きからも明らかである。そして、仮に、B部長が亡Tに対しては、その仕事ぶり等を当時から評価していたとしても、それが亡Tに伝わっていない限り、同人の心理的負荷を軽減することにはならないというべきところ、本件においてそのような事情を認めるに足りる証拠はない。

 

不思議と代議士のニュースと符合するところが沢山あり、実を言うと重要な論点を示唆しています。

 

まず1点目

「大変に仕事熱心で、部下に対しても高い水準の仕事を求め、その指導の内容自体は、多くの場合、間違っては

おらず、正しいものであった。」という点。

 

代議士本人の指導内容は、評価に値しないのですが、裁判では「部下に対しても高い水準の仕事を求め」る事は

OK。と裁判所は認定しています。

 

そして2点目

「仕事上の能力が特に高く、弁も立ち、上司からも頼りにされていたB部長に対しては、上層部でもものを言える

人物がおらず、そのため、B部長の上記指導のあり方が改善されることはなかった。」と加害者の業務能力が職場

内でも評価されていた事実を認定しています。

 

代議士の事案でも、「ボス」に意見出来る人はいなかったであろうと推測されます。

 

そして3点目 ここがポイント!

「部下に対する指導は、人前で大声を出して感情的、高圧的かつ攻撃的に部下を叱責することもあり、部下の個

性や能力に対する配慮が弱く、叱責後のフォローもないというものであり、それが部下の人格を傷つけ、心理的

負荷を与えることもあるパワハラに当たることは明らか」という点

 

いくら業務能力が高い人が、「職務上」正論を言っていても、その方法次第では、「パワハラ」を構成する事が

明示されています。

 

また、「部下に対する非難や叱責等は、直接亡Tに向けられたものではなかったといえるが、自分の部下が上司か

ら叱責を受けた場合には、それを自分に対するものとしても受け止め、責任を感じるというのは、平均的な職員

にとっても自然な姿であり、むしろそれが誠実な態度というべき」と言う点。

 

例えば、一人の部下を同僚の前で、大声で感情的、高圧的かつ攻撃的に叱責したとしましょう。

それは、叱責された本人は当然ですが、それを目撃している同僚も心理的負荷を受けうると示唆し

ています。当たり前の事なのですが、裁判所が認定した意味は大きい。と思います。

 

旧態依然の注意喚起の方法(大声で感情的、高圧的かつ攻撃的に叱責)は通用しないという事ですから。

 

ここまで引っ張っといてなんなんですが、代議士の件は、レコーダーの記録もケガの診断書もあるので、

もう「パワハラ」ではなく、「傷害罪」の要件を構成しています。

 

このタイミングって、何かあるのかい?

 

 

「パワハラって、直接取り締まる法律は今のところ無いから、どうにかしてならんかいな。この案件はパワハラ

と飛び越えてるけども。」と考えていると、代議士古巣の厚生労働省からレポートが公表されました。

 

厚生労働省 平成28年度「過労死等の労災補償状況」を公表

 

 

・・・・「意図的なタイミングじゃ無いよね?(ニッコリ)」

 

 

ちょこっとだけ引用します。

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

(1) 請求件数は825件で、前年度比30件の増となった。

(2) 支給決定件数は260件で前年度比9件の増となり、うち死亡件数も前年度比11件増の107件であった。

2 精神障害に関する事案の労災補償状況

(1) 請求件数は1,586件で前年度比71件の増となり、うち未遂を含む自殺件数は前年度比1件減の198件であった。

(2) 支給決定件数は498件で前年度比26件の増となり、うち未遂を含む自殺の件数は前年度比9件減の84件であった。

 

裁判例にも、代議士の件にも該当する「精神障害での労災請求」は、前年比4.7%増の1,586件。

請求・支給件数共に増えている事、自殺件数も請求198件、支給84件との数字は、大変重い実事だと思います。

 

 

最後に

 

 

代議士の案件は、被害届を提出する準備がある。との事なので、事態が進展するかもしれません。

「パワハラ」もいじめと一緒で、執行機関である「警察・検察」の介入を法的に緩和すれば、解決はするでしょ

う。

ですが、そうなる前に労働環境の整備(労働市場の流動化、懲戒解雇の硬直性の見直し等)を政府・経営者サイ

ドで推し進めなければ、現場が潰れてしまいます。

 

なので、この代議士のニュースが、労働環境改変の起点になればいいなぁと思いながら、終わります。