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先日、こんなニュースが報じられ、皆さまも「オオっ!」と思われたのではないでしょうか。

 

日本経済新聞 スタジオジブリ宮崎監督が引退撤回

 

「長編映画の製作からの引退を表明していた宮崎駿監督が、引退を撤回して、映画製作を再開した。」

とのニュースです。

 

「作るに値する題材を見出したからにほかなりません。」すごいです。御年76歳。

 

クリエイティブな仕事に携わっておられる方に「定年」は無い、関係無い。とは言いますが、まさしくそれを体

現されておられる所はスゴイと感心しちゃいました。

 

なんですが、このニュースを見て一番最初に思った事は、

「宮崎さん(高齢者)の労働環境ってどうなってんの?」でした。

 

よく考えてみたら、「高年齢雇用継続給付」とか「在職老齢年金」ぐらいしか知らないので調べてみよう。

 

と思っていたら所へ、このレポート。

ネットでは大きな話題になっています。 話題なんで、すぐ飛びついちゃいました。

 

出す方も、受ける方も「情報リテラシー」って大事だよねっていう事です。

 

 

それが、コレ。

 

経済産業省 不安な個人、立ちすくむ国家(リンク先PDF)

 

これは、経済産業省内の20代、30代の若手30人で構成されたプロジェクトで、国内外の社会構造の変化を把握す

るとともに、中長期的な政策の軸となる考え方を検討し、 現時点での国の問題点を「官僚」の立場から、世の中

に広く問いかけることを目指すというものです。

 

主なテーマは次の様になっています。

 

引用しますね。

 

1.液状化する社会と不安な個人

2.政府は個人の人生の選択を支えられているか?

(1)個人の選択をゆがめている我が国の社会システム

①居場所のない定年後

②望んだものと違う人生の終末

③母子家庭の貧困

④非正規雇用・教育格差と貧困の連鎖

⑤活躍の場がない若者

(2)多様な人生にあてはまる共通目標を示すことができない政府

(3)自分で選択しているつもりが誰かに操作されている?

3.我々はどうすれば良いか

 

中でも、仕事柄、非常に気になったのが以下の2点です。

「2、政府は個人の人生の選択を支えられているか」内の①居場所のない定年後と⑤活躍の場がない若者

 

「宮崎監督は、映画製作の第一線で奮起されてる。だけど、定年後、居場所が無いって話はいろいろ問題を含ん

でいるな。テーマがかぶってる。やっぱり高齢者の労働環境を調べよう!」

ということで、上記レポートを調べてみました。

 

ですが、・・・・チョットまて。

なんだい、この資料。

 

どのような意図をもって作成したのかは、わかりませんが、例えば上記①「居場所のない定年後」に関する資料

では、14ページに「60歳半ばで社会とのつながりが急速に失われる暮らし。そんな暮らしを多くの人が望んでい

るだろうか?」と、あたかも高齢者が就職先も、社会的活動も無い様な印象になっています。

 

そして、17ページには、根拠資料が掲載されているのですが、この資料、チョットどころか、

かなり恣意的なものを感じます。

 

まずは、「就業を希望しても、1割程度しか常勤の職に就いていない。」のグラフなんですが、

「60歳以上の就労状況で、約74%の高齢者が仕事はしていない。16%の人がパート」とあります。

 

こらー!なんで25年の資料を提示すんのよ? 今とちがうじゃん!(怒)

 

現状、どうなってんの?

 

 

現在、高年齢者雇用安定法の定めにより、①定年の引上げ、②継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導

入③定年の定めの廃止等の高年齢者雇用確保措置を講じることが義務付けられていて、平成29年(現時点)で

は、定年年齢は「62歳」としなければなりません。(4年単位で1歳上昇します。)

 

厚生労働省 高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)

 

それを踏まえて、現状はこうです。

厚生労働省 平成28年就労条件総合調査 結果の概況

上記資料から抜粋して引用します。(強調は筆者によります。)

(注 出典先資料が違うのは、そもそもレポートの資料が記載出典先で見つかりませんでした。)

(1) 定年制
一律定年制を定めている企業割合は 95.4%(前年 92.6%)となっており、定年制の定め方別に定年制を定めている企業に占める割合をみると、「一律に定めている」が 98.2%(同 98.1%)、「職種別に定めている」が 1.6%(同 1.7%)となっている。 

(2) 一律定年制における定年年齢の状況
一律定年制を定めている企業について、「65 歳以上」を定年年齢とする企業割合は 16.1%
企業規模別にみると、1,000 人以上が 6.7%、300~999 人が 9.1%、100~299 人が 11.6%、30~99 人が 18.5%。

一律定年制における定年年齢の設定年齢率

60歳(80.7%) 61歳( 0.5%)62歳( 1.0%)63歳(1.3%) 64歳( 0.4%)65歳(15.2%)

66歳以上(1.0%)

 

(3) 一律定年制における定年後の措置
ア 勤務延長制度及び再雇用制度の実施状況
一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度又は両方の制度がある企業割合は 94.1%(前年 92.9%)となっている。

制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は 10.7%(同 11.0%)、「再雇用制度のみ」の企業割合は 70.5%(同 71.9%)、「両制度併用」の企業割合は 12.9%(10.0%)となっている

勤務延長制度及び再雇用制度の最高雇用年齢
一律定年制を定めており、かつ勤務延長制度又は再雇用制度がある企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は、勤務延長制度がある企業で 56.9%、再雇用制度がある企業で 81.9%。
最高雇用年齢を定めている企業における最高雇用年齢をみると、「66 歳以上」を最高雇用年齢とする企業割合は、勤務延長制度がある企業で 19.4%、再雇用制度がある企業で 9.9%となっている。

(調査対象数  6,310   有効回答数  4,520   有効回答率  71.6%)

 

要約すると、

・統計上、定年制を定めている企業(約95%)のうち、定年年齢が、「60歳」が80.7%と一番多い

「66歳以上」が16.1%

しかし、一律定年制を定めている企業のうち勤務延長制度若しくは再雇用制度又は両方の制度がある企業割合は 94.1%(全企業の90%(95%×94.1%)

・その内、「66 歳以上」を最高雇用年齢とする企業割合は、勤務延長制度がある企業で 19.4%、再雇用制度がある企業で 9.9%

 

「62歳」までは強制。それ以降は勤務延長制度若しくは再雇用制度で65歳までの雇用が普及しているよね。

って言うところでしょうか。

 

何度も言いますが、現状(29年)では「62歳」までの定年は絶対です。

この資料を見る限り、17ページ左の表の根拠は無くなります。

 

次に右の表、「7割の高齢者は地域における活動にも従事していない」ですが、こちらも調べてみました。

内閣府 平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果(全体版)

3.社会的活動への参加に関する事項(リンク先PDF)

17ページ右の表の根拠は、Q22の住んでいる地域での社会的活動(貢献活動)状況の結果からきています。

 

この表、結果を正当に反映しているかの様に見えます。ですが、見えただけでした。

 

特に活動はしていない(69.9%)の理由が問題です。社会的な活動をしていない理由(Q29)より引用します。

その理由を尋ねたところ、全体では「体力的に難しい」(38.3%)が最も高く、次いで「時間的な余裕がない」(28.3%)、他は1割未満となっている。また、「活動をする意思がない」(27.4%)が3割弱を占める。(複数回答可 全体数1,381)

 

この質問、全体数1,381の内、有職者419(約30%)と無職者962(約70%)の混成です。

だったら、すべての理由の意味合いが変わってきます。

(仕事してれば、疲れるのも、時間が無いのも、当たり前だよね。っていう事です。)

 

まだあります。19ページに「定年後の生き甲斐はどこにあるのか?家族や仕事のある高齢者は十分に生き甲斐を

感じているが、 1人暮らしや仕事なしでは生き甲斐を感じにくい。」とあります。

 

ですが、出典先(つまり内閣府)の資料では全く違う印象を受けるんですが?

内閣府 平成25年度 高齢者の地域社会への参加に関する意識調査結果

(概要版の方がわかりやすいので、そちらのリンクを貼っておきます。)

 

以下、抜粋して引用します。(強調は筆者によります。)

 

1.日常の意識に関する事項
(1)どの程度生きがい(喜びや楽しみ)を感じているか
生きがいを「感じている」(「十分感じている」と「多少感じている」の合計)と回答した人は、全体の約8割(79.2%)となっている。
・時系列でみると、生きがいを「感じている」と回答した人は減少傾向がみられる。
(4)就労希望年齢

・仕事をしたいと思う年齢は、「働けるうちはいつまでも」(29.5%)が最も多い。
・時系列で比較すると、平成25年度調査も前回調査も「働けるうちはいつまでも」が最も多いが、その割合は、前回調査36.8%から平成25年度調査29.5%へと減少している。
・年齢層別に比較すると、最も多いのは、60代では「60歳くらいまで」及び「65歳くらいまで」(27.6%)だが、70代と80代以上では「働けるうちはいつまでも」(70代:33.0%、80代以上:37.3%)であり、年齢が高くなるとともに、仕事をしたいと思う年齢が高くなる傾向がみられる。

 

2.社会参加活動への考え方に関する事項
(1)参加したい活動

・個人または友人と、あるいはグループや団体で自主的に行われているもので参加したい活動は、「健康・スポーツ」(44.7%)が最も多い。
「活動に参加したい(計)」(いずれかの活動に参加したい)と思っている人は、約7割(72.5%)となっている。

 

上記資料では、「高齢者になっても、生き甲斐をもっていて、(約8割)、活動に参加したい(約7割)。仕事が

出来る環境があれば、できれば働きたい(約3割)。」といった事情が垣間見えます。

 

ここまでくるとチョット(いやかなり)、ヒキます。

 

最後に

 

最初に読んだ時は、「面白いなぁ。良いレポートだよな。これをベースにブログにまとめよう。(ニコッ!)」

 

と思っていたのですが、いざ調べてみると、膝がガクガク震えてきました。

 

どーしてくれんだ!!この調べた時間!!高齢者雇用についてかけねーじゃねぇか!!

 

「ごたんだ」が「地団駄(じたんだ)」踏んでおります。(プッ)

 

 

いかがですか?恣意的な情報の抽出がいかに結論を違えるかという良い例です。

 

*これ以上の詮索はやめておきますね。(ほかの資料でも、まだいろいろあるのですが。)社会学や政治論は、

このブログの主旨とはちがうし、またそこまで論じる知識も無いので。

 

現状、このレポートの中身の真偽、是非の意見は頻出しています。これは本来の目的であろう「世の中に広く問

いかけることを目指す」ことが達成されつつある証明でしょう。(真偽の程は別にして。)

 

問題提起という意味では大変面白いので、はなし半分「サスペンス小説」を読むぐらいの感覚で読んでください。

 

すみません。次回は必ず、高齢者の労働環境と若年者雇用について考えてみたいと思います。

 

(またしても長くなっちゃった。)

 

どうぞ、最後までお付き合いの程をよろしくお願いします。