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今回の記事は、直接皆様には、関係無い話なのですが、当事者の一人として気になるのでまとめてみます。

 

(間接的には大ありの予感。)

 

2017年5月16日、産経WEBニュースにて「労働監督の民間委託を決定 平成30年度、規制改革推進会議」

 

という記事がリリースされました。

 

以下引用します。(強調は筆者によります。)

 

政府の規制改革推進会議は16日、長時間労働の監督強化のため、労働基準監督業務の一部を社会保険労務士など民間に委託することを決めた。6月にまとめる答申に盛り込む。厚生労働省が制度の詳細を決め、平成30年度の開始を目指す。

 会合後に記者会見した大田弘子議長(政策研究大学院大教授)は「政府は長時間労働の是正に本格的に取り組んでおり、事後的にしっかり管理するために民間を活用する」と述べた。

 労働基準監督署の人手不足により、定期的に監督するのは年間で全事業所の3%前後にとどまる。このため、民間の力を活用して監督する事業所数を増やす。

 

この規制改革推進会議の方針は、2017年3月9日、同会議にて、労働基準監督官の一部業務の民間委託について

議論がなされた事に由来します。(内閣府 規制改革推進会議 会議情報(サイト)3/9議事次第

「労働基準監督業務の民間活用タスクフォース」の設置について(PDF直リンク))

 

簡単に言ってしまえば、

労働基準監督署の監督官が足りないから、ブラック企業が取り締まれないんだよね。だから労働法に詳しい

「社会保険労務士」に監督署の業務の一部を委託しようかい。」という事なんです。

 

この政府の見解の発表前に激しい意見の対立がありました。(今も続いてるようです。)

 

まずは、コレ。 こちらの記事は業務委託の肯定派です。

 

 

以下、抜粋して引用します。(強調は筆者によります。)

 

・労働法違反の摘発を進めるためには、一般企業への定期監督等の業務の一部を民間事業者に委託することで、悪質な企業への「臨検」(立ち入り検査)に力を入れられるようにする「集中と選択」が不可欠である。

・厚生労働省によれば、雇用者1万人当たりの監督官の数は、独1.89人、英0.93人、仏0.74人に対して日本では0.53人と、先進国のなかでは米国0.28人に次ぐ低さである。しかもこれは監督官の資格保有者数であり、管理職や労基署以外の勤務者を除いた実際の実働部隊はその半分といわれる。とくに企業が集中する首都圏では監督官の不足は極端で、東京23区では一人の監督官が約3000事業所を担当することになる。

・小泉構造改革の時代には、2006年の道路交通法改正で駐車違反の取り締まり業務の民間委託ができるようになり、警官がより大事な業務に専念できるようになった。また、2007年には刑務官の不足を補うために、企業との協力で運営する官民協同刑務所も実現した。

 これらと同じ発想で、極端に不足している労基署の監督官の業務を、民間事業者に部分的に委託することはできないのだろうか。

・日本は先進国ではあるが、多くの労働基準法違反が生じており、過労死等の社会的問題が拡大している。それにもかかわらず、監督官の人員不足を理由に、長らく違反行為が放置されてきた。これは同じ厚生労働省の薬害被害の場合と同様な「行政の不作為」の典型例といえる。

 

続いてコチラ。 こちらのサイトは業務委託は反対という立場です。

 

全労働ウェブサイト 全労働の提言・見解

この「全労働」とは「全国の職場、厚生労働省本省、都道府県労働局、公共職業安定所(ハローワーク)や

労働基準監督署で働く職員・非常勤職員で組織する労働組合です。組合員数は約1万6千人で、労働行政で

最大の労働組合」だそうです。

 

こちらも、抜粋して引用します。(強調は筆者によります。)

 

・労働関係法令の違反状況等を確認し、その是正を求める労働基準監督業務は、強制力を背景にした関係職場への立ち入り、関係書類(電子データを含む)の閲覧、関係者への尋問等を通じてきめ細かく実態を明らかにしていく作業が不可欠であるが、権限のない社会保険労務士等の調査では実効性の確保が難しく、話を聞くだけで終わってしまうおそれがある

・労働基準監督官は、立入調査(臨検監督)の際、労働者の安全確保、権利保障の観点から、即時に権限(安全衛生分野を含めた行政処分や捜査着手)を行使しなければならない場合も少なくない。そのような権限行使が必要であるにもかかわらず、それをしない場合、労働者の安全・権利を十全に確保できないばかりか、労働基準監督官が赴く企業との公平性も担保できない

開業又は開業予定の社労士が企業に赴く際、営業活動(顧問先企業の開拓等)と一体化するおそれがある。この場合、営業活動の相手方である企業を厳しく調査することは期待できず、当該調査は有害である。

・一部の社会保険労務士は「労働基準監督官対策」を宣伝文句に営業活動を展開しているが、こうした社労士が労働基準監督業務の一部を担うことで著しい利益相反が生じ、有害。

・監督業務にあたっては、行政に蓄積された様々な企業情報(違反履歴等)をあらかじめ確認しておくことが重要ですが、契約上の守秘義務しかない社労士等とこれらの情報を共有することは不適切

監督業務の民間委託は、労働基準行政職員を増やさない口実にすらならないばかりか、きわめて有害であることから、高い専門性を備えた労働基準行政職員を直ちに増員すべきである。

 

ふむ、ふむ。なるほど。

 

両者とも、「労働関係法令違反の監督、摘発」という目的は一致していますね。

 

だったら、後は方法論だけだよね。

 

もうちょと信用して(お願い)

 

 

わたしは、当事者の一方なので、どうしても意見にバイアスがかかってしまいます。

 

しかし、個人的にこの問題は、「働き方改革」の根幹、ひいては皆さんの働き方の根本を変えてしまうかもしれ

ないのでとても重要。と考えていますので、私見を展開します。

 

まずは、大原則。今回の会議の提言に限らず、すべての施策の原則です。それは、

 

「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」適正な労働条件の確保です。

労働基準法第1条を意訳しています。ちなみにこの1条は憲法25条1項(生存権)からの派生原理です。

 

この大原則を守るために、肯定派・否定派どちらの意見でも共通して指摘していることがあるんです。

それは「マンパワー不足」です。

 

「雇用者1万人当たりの監督官の数日本では0.53人」もそう。

監督官の人員不足を理由とする「行政の不作為」」も高い専門性を備えた労働基準行政職員の増員」もそうです。

 

また、以前の記事でも紹介したように、厚生労働省が公表する事案で、労働基準法違反の送検事業所数が全体

の16.4%に過ぎないのも、おそらく(ほぼ間違いなく)そういった背景事情があるのでしょう。

 

「ブラック企業リスト!!」 なんか思ってたんとちがう・・・(労働基準関係法令違反に係る公表事案)

 

 

現状、人も時間(人材確保・育成)もカネ(予算・財政上の問題)も確保が難しいのであれば、

労働法に精通した社会保険労務士に「投げちゃえばいいじゃん。」の発想は極めて、普通です。

 

しかし、反対派はこの様な指摘をしています。「権限のない社会保険労務士等の調査では営業活動と一体化する

おそれがある。この場合、営業活動の相手方である企業を厳しく調査することは期待できず、調査は有害。」

きっとこんなイメージなんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

うん。・・・・おっしゃる通りです。(妙に納得。)

 

ち、ちが~う。むしろ、こう。

 

 バランス感覚(指摘)とフォロー(改善)が大事

 

 

我々、社会保険労務士は、「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的」としながら、

「常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければな」りません。

e-gov 社会保険労務士法 第1条、第1条の2

確かに、営業の匂いを疑うのは、致し方ないところではあります。

がしかし、謙遜してもあれなんで、自信をもって言い切ります。(他の社労士さんもきっと思っています。)

「我々、社会保険労務士は、働いている方々(管理者含め)全員の労働環境を良くしたいんだ。真剣に。」

ですから、もうちょっと信用してくれてもよくないですか

 

スタンスの違いもあるのでしょう。

監督官庁は「指導・監督」がメイン。我々、社労士は「指摘・改善」がメイン。

立ち位置が全く違うので、意見が噛み合うわけがありません。

 

ですが目指すゴール(適正な労働条件の確保)は一緒なので、弊害は無いはずです。

 

もしそれでも、不安だったら、法律で「営業活動(名刺の配布や後日の再訪問等)の禁止」や「知識確認の為の

テスト」、罰則規定の強化(失格処分の拡充等)などを整備しちゃえばいいでしょう。

 

今後、社労士が絡むことによって、「規制・摘発」ありきの制度運用から、「指摘・改善」の制度運用へと変化が生まれる事を切に望みます。

 

ここで表題。「やってみなはれ。やらなわからしまへんで。」by 鳥井信治郎(サントリー創業者)*1

 

 最後に

 

安部首相の経済政策目標の柱である「働き方改革」を達成する為には、いわゆる

 

ブラック企業の摘発

 

は避けては通れません。その意味でも実行性が高い改正と思われます。

 

そうなれば、あなたの事業所にも社労士が監督に行くかもしれません。

 

ほら。すぐあなたの事業所のすぐ後ろに社労士が・・・。 キャァーーー!!

 

(ウソです。すみませんでした。)

 

 

*1 最後に、表題にも書きました「やってみなはれ」ですが、敬意を表し(人間の本質を突いた、本当に重い

言葉だと思います。)リンクをはっておきます。

 

サントリーホールディングス株式会社 やってみなはれ精神が生み出したフロンティア製品