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29年5月10日付で厚生労働省から「労働基準関係法令違反に係る公表事案」というリストが公表されまし

た。

厚生労働省 長時間労働削減に向けた取組 「労働基準関係法令違反に係る公表事案」(リンク先PDF)

 

webメディアに多数取り上げられているので、ご存じの方も多いかと思います。

*「賃金不払いは当たり前、労災で虚偽申請も 厚労省「ブラック企業リスト」がひどすぎる」など

 

早速、「ブラック企業リスト」なるものの中身を確認してみました。

 



 

まずは、違反摘発の確認状況から始めます。

 



 

中身を検証してみます。

まずは、公表数334事業所、法条違反件数587件のうち、ほとんどが労働安全衛生法違反です。

 

多いのがこれ。(あまりにも多すぎて件数を確認していません。)

 

労働安全衛生法 20条、21条 (事業者の講ずべき措置等)

 

次にこれでしょうか。

 

最低賃金法 4条(最低賃金の効力)(これまた、多すぎて件数未確認。)

 

 

そして、俗言う「サービス残業」(時間外手当の未払い)「ブラック企業」(過剰な労働時間を強いる企業)

などを、取り締まる「労働基準法」違反に該当する事業所数は、

 

公表数334事業所中 55事業所(16.4%)

 

法条違反件数587件中 57件(9.7%)でした。

(間違ってたらすみません。)

 

次に労働基準法の違反内容です。

労働基準法違反の内容

労働基準法 該当条項件数割合(%)
5条(強制労働の禁止)47.0
20条(解雇の予告)11.7
24条(賃金の支払)610.5
32条(労働時間)3459.6
37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)610.5
62条(危険有害業務の就業制限)23.5
101条(労働基準監督官の権限)11.7
104条2項(報告等)23.5

 

うーん。

やはりと言うかなんというか、32条違反が一番多いですね。

 

労働基準法 32条

 



私は激しく勘違いをしていたかもしれません。



 

一番多い(であろう)労働安全衛生法 20条、21条は次のとおりです。(法庫 労働安全衛生法より引用)

(事業者の講ずべき措置等)

第二〇条 事業者は、次の危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。

一 機械、器具その他の設備(以下「機械等」という。)による危険
二 爆発性の物、発火性の物、引火性の物等による危険
三 電気、熱その他のエネルギーによる危険
第二一条 事業者は、掘削、採石、荷役、伐木等の業務における作業方法から生ずる危険を防止するため必要な措置を講じなければならない。
 上の条文に該当する事業者は、放っておけば、生命の侵害につながる重大な事故を引き起こしかねません。
つまり、このリストにある、送検された企業は、上記条文にあるような重篤な労働災害を引き起こした。又は
引き起こす可能性があった為に、厳しく指導(事案が発生すれば即送検)されたという事です。*1

次に、多い(であろう)最低賃金法 4条は次のとおりです。(e-Gov 法令検索 最低賃金法より引用)

最低賃金の効力)
第四条  使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

3  次に掲げる賃金は、前二項に規定する賃金に算入しない。

一  一月をこえない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

二  通常の労働時間又は労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの

三  当該最低賃金において算入しないことを定める賃金

4  第一項及び第二項の規定は、労働者がその都合により所定労働時間若しくは所定労働日の労働をしなかつた場合又は使用者が正当な理由により労働者に所定労働時間若しくは所定労働日の労働をさせなかつた場合において、労働しなかつた時間又は日に対応する限度で賃金を支払わないことを妨げるものではない。

 ここ!!社労士的には、この条文が一番引っかかります。(他が気にならないわけじゃないですよ。)

ココからあくまで私見です。(当たってたらチョット怖いな。)

なぜ、こんなマイナー法律(?)である「最低賃金法4条違反」が頻発するのか、思い当るフシがあります。

それは「固定残業制」(みなし残業)の普及です。

この「固定残業制」(みなし残業)とは、「残業代をあらかじめ月給に残業代を固定で記載し、残業時間を計

 

算せずとも固定分の残業代を支払うという制度」で、運用されておられる方も多数おられると思います。

ですが、この制度、固定残業時間(?こんな単語、労基法にはありません。)以上の残業をしても、「残業代

払っているから大丈夫。」として、残業代を支給しない。とか、求人票の「基本給水増し」といった問題が頻発

しています。

まあ、これを利用されてる社労士さんも多いのですが、わたしはこれに

「モノ申す!!(怒)」
な訳です。ハイ。(この問題は回を変えて、じっくり考えてみたいと思います。)
*ちなみに最低賃金法がらみでいえば、webニュース上で「知的障害者に最低賃金以下の給与を支給」
みたいな記事を見かけました。かなりキャッチーでびっくりしましたが、これは
「最低賃金の減額の特例許可申請」をキチンと行えば、全く問題ありません。
(送検された事業所は申請自体なかったか、申請の内容に虚偽があったのではないでしょうか。)
この制度の趣旨が「最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭めるおそれなどがあるため」という
至極もっともなものであるので、ニュースを読んで誤解をしないで頂きたいです。
(就業チャンスが無くなってしまいます。)

それに比べて労働基準法 32条
(労働時間)
第三十二条  使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
    2   使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
 労働基準法関連は、まず
①労働基準監督官が臨検監督をして、
法令違反があった場合、「是正勧告書」(行政指導 法的強制力無し)なるものを交付され、
③勧告の通り是正しない場合や、あまりにも悪質と判断された場合は、検察庁に書類送検
という流れを取る以上、②の段階で「是正しました。」と報告するケースや、そもそも臨検監督を受けずに、
発覚しないケースが多数を占める為に、送検まで至らない事が考えられます。
なので、全体の約16%しかないのも、うなづけます。
 その中でも32条違反が突出しているのは、「36協定の未締結・未届出」か「36協定以上の労働時間を強
要」しているか、どちらかです。これこそ、俗に言う
「ブラック」のイメージでしょう。
 それでも、現にリストを公表しているのは、「うち(厚生労働省)は、「サービス残業」や「異常に長い労働時
間」だけ規制、監督するわけでは無いぞ。今後も労働安全衛生に関連する規制を強化するぞ。」と言った厚生労
働省の意思が見えるような気がします。(そもそも「ブラック企業リスト」と銘打って公表していないので。)


最後に


 わたしも「ブラック企業」という言葉の持つイメージが先行して、「【ブラック】って【サービス残業】や
【異常に長い労働時間】だけ」という固定観念を持っていたようです。 いやぁ~お恥ずかしい。
【サービス残業】や【異常に長い労働時間】だけではなく、労働安全に関する事項(事業所での危険を防止する
ため必要な措置の不作為 等)に対する考え方も、きちんと喧伝(盛んに言いふらすこと)していかなければ。
と思わせるニュースでした。
逆にいえば、労働基準法違反が少ないのではなく、労働安全衛生法違反「生命の侵害に直結する違反」こんなにも
多いんだ。と考えたいものです。
 

*全く関係ないのですが、データはキチンとバックアップを取りましょう。(復元は大丈夫?)

*1 これは完全に「リスクアセスメント」の範疇です。
こちらのサイトでお試しをしてみて、
本格稼働はこちらを参考に。